こんにちは。Sun Asterisk クラウド支援サービスチームです。
新規サービス開発や大規模システムにおいて、クラウド上のデータ保護は事業継続の生命線です。しかし、適切な設計や選定基準がわからず悩む担当者も少なくありません。
本記事では、SaaSやクラウドインフラ利用に不可欠なクラウドバックアップの定義から責任共有モデルの理解、メリット・デメリットをまとめました。さらに、大規模プロジェクトで失敗しないための実践的な選定基準までを解説します。
- クラウドバックアップの基本とインフラ設計における責任共有モデル
- イメージバックアップとファイルバックアップの違いと使い分け
- BCP強化やエンジニアの負荷削減などクラウド運用のメリット
- コスト肥大やネットワーク圧迫を防ぐための導入の注意点
- 大規模開発プロジェクトで必須となるバックアップ要件の選定基準
クラウドバックアップの定義と必要性
まずは、クラウドバックアップの基本と、インフラ設計において重要となるクラウド特有の概念やオンプレミスとの違いを解説します。
クラウドバックアップの定義
クラウドバックアップとは、インターネット経由でサービス事業者が提供する仮想ストレージや外部サーバーに、システムの復元データを複製して保管する仕組みです。自社内で専用の物理サーバーや記憶媒体を用意する手間がなく、初期費用を抑えて迅速に導入できます。複数拠点にデータが分散保存されるサービスを活用すれば、機器の故障や災害によるデータ消失リスクを低減し、安全にデータを保護可能です。ただし、バックアップの取得頻度や保存先、世代の管理、復旧手順まで設計しておくことが重要です。
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インフラ設計者が直面する「責任共有モデル」
クラウドサービスを利用する際、インフラ設計者は「責任共有モデル」を理解する必要があります。サービス事業者はインフラ自体の可用性や物理的なセキュリティを担保しますが、データそのものの保護やバックアップは、ユーザー企業側にも責任が生じます。特にPaaSやIaaSを利用する場合は、自社でバックアップ方針や復旧手順を設計することが求められます。
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オンプレミスとの違いとハイブリッド運用
自社で機器を抱えるオンプレミスと比較して、クラウドバックアップは初期費用が安く、専門要員による保守の負担が少ない点が魅力です。ただし、大規模開発では、機密性の高い重要データは手元で保管しつつ、災害対策としての遠隔地バックアップにはクラウドを活用するなど、要件に合わせて両者の強みを組み合わせた設計が求められます。
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クラウドバックアップのおもな種類

バックアップ対象の違いやデータ保存効率を高める仕組みなど、要件に合わせて選ぶべきおもな種類について紹介します。
インフラ全体を復旧するイメージバックアップ
イメージバックアップは、OSやアプリケーション、設定ファイルを含め、システム全体を丸ごと複製して保管する方式です。システム障害時などに、元の環境を迅速かつ簡単に復元できるため、大規模システムのバックアップとして利用されています。ただし、データ容量が大きくなりやすく、特定のファイルだけを抽出して確認するといった細かい操作には不向きです。
特定の成果物を対象とするファイルバックアップ
ファイルバックアップは、特定のファイルやフォルダ、成果物のみを選定して複製・保管する方式です。イメージバックアップと比較してデータ容量を抑えられ、バックアップ処理にかかる時間も短縮できます。クラウド上の特定のファイルに直接アクセスして容易に復元できるため、ピンポイントで細かいデータ保護が求められる場面で高い利便性を発揮します。
大容量データを効率化する重複排除機能
大規模な開発プロジェクトではデータ量が膨大になるため、バックアップにかかる時間と容量を圧縮する重複排除機能が重要です。これは、システム内で重複しているデータブロックを検知し、一度だけ保存する仕組みです。この機能により、クラウドストレージの消費量を削減し、ネットワーク帯域への負荷やデータ転送時間を最小限に抑えられます。
クラウドバックアップのメリット
クラウド環境ならではの高い拡張性や自動化、BCP対策など、企業が導入によって得られるメリットを解説します。
DR・広域災害対策によるBCPの強化
BCP(事業継続計画)とDR(災害復旧)の強化はクラウドバックアップのメリットです。データは遠隔地の複数データセンターに分散保存されるため、自社の拠点が自然災害や火災に見舞われた場合でも、データ消失のリスクを低減できます。インターネットと端末があればシステムやデータの復旧作業に着手できるため、事業停止時間を最小限に抑えられます。
ただし、保存先のリージョン、冗長化方式、復旧手順を事前に確認しておくことが重要です。
不変ストレージによるランサム対策
ランサムウェアなどのサイバー攻撃への備えとしてもクラウドバックアップは有効です。特に、一度保存したデータを一定期間変更・削除できない不変(イミュータブル)ストレージを利用すれば、万が一社内ネットワークがランサムウェアに感染しデータが暗号化されてしまっても、バックアップデータだけは隔離・保護されます。
事業スケールに追従する容量の柔軟性
オンプレミスの場合、将来のデータ増加を見越してあらかじめ余裕を持ったストレージ容量が必要です。一方で、クラウドサービスなら、事業の成長や新しいサービスの展開に伴ってデータ量が急増した際でも、必要なタイミングで必要な分だけ容量を拡張できます。無駄な余剰リソースを抱えずに、事業の成長に合わせた運用が可能です。
自動化によるエンジニアの負荷削減
クラウドバックアップは、事前の設定に従って自動的かつ定期的にデータ複製が実行されます。担当者が手動でバックアップ作業を行ったり、物理メディアを交換・管理したりする手間は不要です。バックアップの成否や進捗を管理画面で確認できるため、システム運用・保守にかかる業務負荷を削減できます。
クラウドバックアップの注意点とデメリット
クラウド運用特有のネットワーク課題やコスト構造、システム影響など、導入前に考慮すべき注意点とデメリットを解説します。
初期・大量復元時のネットワーク圧迫
インターネット回線の帯域に依存する点は、クラウドバックアップで注意すべき点です。特に初回のフルバックアップ時や、大規模なシステム障害により大量のデータを一括で復元する際には、社内の他の業務システムや通信速度に悪影響を及ぼす恐れがあります。専用線の導入や、夜間に処理を分散させるなど、ネットワーク負荷を考慮した運用設計が必須です。
データ蓄積や読み出しによるコスト肥大
クラウドバックアップは初期費用が安い一方で、データ量が蓄積されるにつれて毎月のストレージ利用料が増加する点に注意が必要です。また、データの保存だけでなく、復元時などのデータ読み出しや転送にも従量課金が発生する場合があります。長期間の運用を見据え、不要なデータの削除ルールを設けたり、転送料金を見積もったりしてコスト肥大を防ぐ対策が必要です。
障害に備えたマルチクラウドの必要性
クラウドサービス自体に障害が発生した場合、バックアップデータにアクセスできなくなり、復旧作業が滞る危険性があります。単一のサービス事業者に依存していると、その事業者のサービスが停止した際の影響を受けてしまいます。重要な大規模システムにおいては、異なる複数のサービス事業者を組み合わせてデータを保護するマルチクラウドの検討も必要です。
本番インフラへの負荷とサービス影響
システム稼働中にバックアップ処理を実行すると、本番環境のサーバーCPUやメモリ、ストレージのI/Oに大きな負荷がかかり、サービスのレスポンス低下や遅延を引き起こす可能性があります。対象システムのピークタイムを避けたスケジュール設定や、スナップショットを活用した低負荷なバックアップ手法の選定が必須です。
プロジェクトで必須となる選定基準

大規模システムのデータ保護方針を定める際、ビジネス要求に応えるために確認しておくべき重要な選定基準を解説します。
ビジネス要件から逆算するRTOとRPO
選定において重要なのが、いつまでに復旧させるか(RTO:目標復旧時間)と、どの時点のデータまで戻せるか(RPO:目標復旧時点)をビジネス要件から逆算して定義することです。ダウンタイムが許されない大規模システムなら、即時復旧が可能な高度なサービスが必要になります。コストとのトレードオフになるため、システムの重要度に応じて最適なRTOとRPOを選定します。
重要度に応じたコールドストレージ活用
全てのデータを高速かつ高額なストレージに保存するのは非効率です。直近のアクセス頻度が高いデータは標準ストレージに、法規制で長期間の保管が義務付けられているものの普段は使用しないアーカイブデータには、低単価なコールドストレージを活用するのがおすすめです。データの重要度やライフサイクルに応じて保存先を自動的に振り分け、保管コストを最適化します。
暗号化とアクセス権限のセキュリティ
機密データや個人情報をクラウドに預ける以上、強固なセキュリティは必須要件です。データが通信経路上にあるときだけでなく、クラウドストレージに保存されている状態でも情報の暗号化が施されるかを確認します。さらに、バックアップデータへのアクセスを厳格に管理するため、多要素認証やアクセス制御を備え、不正アクセスを防げるサービス選びが重要です。
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共有型とバックアップ専用機能の使い分け
一般的なファイル共有機能を持つクラウドストレージをバックアップに代用することも可能ですが、企業レベルでは専用サービスの導入がおすすめです。共有型は手軽な反面、ランサムウェアに感染したファイルが同期されて上書きされるリスクがあります。一方、バックアップ専用機能を持つサービスであれば、世代管理や不変ストレージ機能により、安全な過去の状態へ確実に戻せます。
まとめ
クラウドバックアップ環境を構築する際は、まず自社のビジネス要件に基づくRTO・RPOを定義し、責任共有モデルを理解した上で、データの重要度に応じた最適な手法の選定が重要です。要件や選定基準が曖昧なまま導入を進めると、いざというときに必要なデータを復元できず、事業継続に致命的な影響を及ぼす可能性があります。
株式会社Sun Asteriskでは、DXコンサルティングから設計・開発まで一気通貫で支援し、事業に合わせた最適なクラウド環境の構築をサポートしています。クラウドインフラの構築やAWSの具体的な導入メリットをまとめた資料「AWS活用事例と導入メリット」をご用意していますので、クラウド上のデータ保護要件やインフラ設計を検討する際にぜひご活用ください。
よくある質問
Q クラウドバックアップとは何ですか?オンプレミスと比べてどのような特徴がありますか?
Q クラウドバックアップの導入・選定を進める際、まず何から決めるべきですか?
Q システムやデータのバックアップは、どのような方式やアプローチから選んで進めればよいですか?
Q クラウドバックアップを運用する上で、気をつけるべき注意点やリスクは何ですか?
Q クラウドバックアップを導入・運用するには、どれくらいの費用がかかりますか?
Q 自社にインフラ設計のノウハウがない場合、クラウド環境の構築を外部に支援してもらうことはできますか?
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