開発支援事例:大正製薬株式会社
通勤中の音楽鑑賞や仕事中のオンライン会議など、イヤホンを使う時間が年々増えています。「聞こえ」の健康が意識して向き合うべきテーマになりつつあるなか、大正製薬は同社初となるヘルスケアアプリ「AudioCardio」をリリースしました。薬や健康食品ではなくスマホでアプローチすることで「聞こえ」のセルフケアを提供する新たな挑戦です。同社はこのプロジェクトにおいて、米国のAudio Cardio社との日本国内における独占的ライセンス契約を締結しています。
Sun*は、この新規事業の立ち上げ段階から支援・伴走しました。海外の技術を日本のユーザーが日常的に使いやすい形へ昇華させるため、ビジネスデザインからUI/UX設計、技術的橋渡し、開発実装に至るまで一貫してサポートしています。
「AudioCardio」は、日常に取り入れやすい“ながら聞き”できる「耳トレ」アプリ
「AudioCardio」は、スマートフォンとイヤホン・ヘッドホンを使い、簡単な操作で「聞こえのチェック」と「耳トレ」ができるヘルスケアアプリです。
アプリを通じて、まずご自身の聞こえの状態をスコア化し、ご自身の苦手な音域を把握することができます。

その後、チェック結果をもとに設定された「ぎりぎり聞こえない」トレーニング音をバックグラウンドで再生できるようになります。ユーザーは好きな音楽や動画を楽しみながら、自然に「ながら聞き」で耳のトレーニングを行うことができるのです。
トレーニングのために特別な時間を確保する必要がないため、無理なく「聞こえ」のセルフケアと向き合うことを習慣化できる、新しい発想のプロダクトとなっています。
米国発の革新技術を「日本の日常」に馴染ませること
大正製薬にとって、「AudioCardio」のような有料アプリの開発・販売は初めての経験であり、大きなチャレンジでした。さらに難易度を上げる要因となったのは、このプロジェクトが非常に複雑な座組みだったことです。米国企業であるAudio Cardio社のSDK(ソフトウェア開発キット)をベースとして、大正製薬が日本市場向けにアプリを開発し、自社システムと連携するために複数ベンダーが関わる必要がありました。

海外製SDKの品質管理や日本独自のシステムとの繋ぎ込みは、プロジェクトの成否を分ける大きな技術的ハードルです。また、米国版アプリを単に翻訳するだけでは、デジタルに不慣れな人も少なくない幅広い年齢の日本ユーザーに継続して使ってもらうことは困難です。言語や文化の違いを乗り越えるためには、単なる開発請負ではなく、共に考え、技術的な橋渡しとなる伴走パートナーが不可欠な状況でした。
ユーザー体験を純化させる「UI/UXの再設計」
Sun*からはビジネスデザイナーとUXデザイナーが初期段階で参画しました。まず着手したのは、既存の米国版アプリを見直し、日本のユーザーにとっての体験価値を見極めることです。例えば、ユーザーストーリーとユーザーアクションを見直すなかで、米国版にあった「音声ガイド」と「アプリ内音楽再生機能」を削除し、さらに大正製薬のブランドイメージに近づけるために大胆なデザイン変更を行いました。
音楽や動画を楽しむ行為を使い慣れた外部サービスに委ねることで、日常に溶け込む「耳トレ体験」そのものの価値に集中する設計は、Sun*が抱く体験設計の思想にも合致するものでした。また、初めてアプリに触れるユーザーやデジタルに不慣れな人でも迷わず利用できるように、チェック結果をグラフ表示したり一部情報の表示画面を分けたり、情報の優先度と密度を整理しました。翻訳によって冗長になっていた表現を、大正製薬の専門知見とSun*のUX視点を融合させ、文字量を抑えたやさしい解説に整理しました。
さらに、デザイン面では、大正製薬のブランドが持つ「信頼感・清潔感・やさしさ」を重視してブランドカラーやフォントを定義し、ネコのイラストなどを導入しました。親しみやすさを感じさせることで、毎日使いたくなるブランド体験を形にしました。
複数のステークホルダーを繋ぐ、技術的橋渡しとアジャイル進行
開発フェーズにおいてSun*が特に注力したのが、海外企業との専門的なやり取りを担う「技術的な橋渡し」です。外部SDKの品質の課題やコミュニケーションにおいて3カ国語が入り乱れる環境のなか、テストケースの網羅性を担保しながら地道な試行錯誤を重ねて、動作の安定化を図りました。
さらに、Sun*は「1カ月単位での柔軟な体制変更」を提案しました。新規事業を進める際は先の状況が見えづらいため、開発スピードとコストのバランスを高い次元で両立させるには、必要なタイミングでリソースを最適化する必要がありました。また、意思決定の場面では、複雑な技術仕様を分かりやすく可視化・説明することで、クライアントが納得感を持って迅速に判断できる環境を構築し、三社間の円滑な連携実現に貢献しています。
共に挑む「Fly for Life.」の未来へ
2026年3月の正式リリース後、大正製薬の社内外からは、プロダクトの「期待感と信頼感を両立したトーン」や「親しみやすいイラスト」に対して好意的な評価が寄せられました。Sun*が意図したブランド体験が、大正製薬が提供する新しいヘルスケアサービスの価値をユーザーへ届ける一助になっています。
「AudioCardio」は、日本のユーザーのライフスタイルに深く寄り添い、耳の健康という新たなセルフケア習慣の定着に向けて進化を続けていくアプリです。Sun*はこのアプリの共創パートナーとして、大正製薬のヘルスケア領域におけるデジタルへの挑戦をこれからも継続的に支援していきます。
※ヘルスケアアプリ「AudioCardio」は、医学的な診断、治療、予防、又はそれに準ずる行為を目的としたものではありません。診断や治療を必要とする場合は、医療機関にご相談ください。
