こんにちは。Sun Asterisk AWSクラウド支援サービスチームです。
多くの企業で老朽化した基幹システムの刷新が急務となっていますが、「何から手をつけるべきか」「他社はどう成功させたのか」と悩む担当者も少なくありません。本記事では、モダナイゼーションの基礎知識から、先行企業の成功事例、よくある失敗パターンと対策までを解説します。システム刷新を経営課題として捉え、安全かつ効果的にプロジェクトを進めるための役立つ情報をまとめました。
- モダナイゼーションの定義やDX、マイグレーションとの違い
- レガシーシステムが抱えるブラックボックス化などの深刻な課題
- 各業界の先行企業によるモダナイゼーションの成功事例
- 成功企業に共通するポイントと避けるべき失敗パターン
- システム刷新を安全かつ確実に成功させるための3つの手順
モダナイゼーションとは?
まずはモダナイゼーションの定義やDXとの関わり、混同されがちな類似語との違いを解説します。
併せて読みたい:モダナイゼーションとは?メリットや5つの手法・事例までわかりやすく解説
モダナイゼーションの意味とDXの関係
モダナイゼーションとは、老朽化した既存のITシステムを最新の技術環境に合わせて最適化することです。単なるシステムの延命ではなく、市場環境の変化に対応できる基盤づくりを意味します。クラウドやAIなどの導入により、移り変わりの激しい状況にも柔軟に対応できるようになります。結果として、ビジネスの衰退を防ぎつつ、市場競争にも有利に働く仕組みづくりが可能です。
併せて読みたい:モダナイゼーションとは?DXとの違いや業務システムの刷新手法・手順を徹底解説
マイグレーションとの違い
よく似た言葉にマイグレーションがありますが、これは既存の資産をそのまま新しい環境へ移行するアプローチです。一方でモダナイゼーションは、単に環境を移すだけでなく、システムの構造自体を現行のビジネスモデルに合わせて再構築・最適化する点に違いがあります。業務効率の向上や将来的な拡張性を見据え、IT資産の価値を高めることも可能です。
企業が抱えるレガシーシステムの課題
多くの企業が直面している、レガシーシステムがもたらす深刻な経営リスクについて解説します。
併せて読みたい:レガシーシステムとは?問題点と脱却の進め方を実務目線で解説
システムのブラックボックス化
長年の運用における度重なるアドオンや改修により、システムの全体像や内部構造が誰も把握できない「ブラックボックス化」が進行するケースが増えています。新しい事業展開や法改正に合わせた柔軟なシステム変更が困難になり、維持保守コストは高騰しがちです。最新のデジタル技術を柔軟に取り入れることができず、結果的に機会損失を生み出しています。
IT人材の不足と属人化の進行
メインフレームやCOBOLなどのレガシーな言語を扱えるベテラン技術者の高齢化と退職が進み、深刻なIT人材不足に直面しています。特定の担当者しか運用できない属人化が常態化すると、万が一の障害発生時に迅速な対応が取れず、最悪の場合はビジネスが完全に停止しかねません。新たにレガシー技術者を育成するのも困難であり、ノウハウの継承が難しい状況です。
データ分断による競争力の低下
各部門で個別最適化されたシステムが孤立し、社内のデータが分断されるサイロ化が起きています。基幹データがリアルタイムに連携できないため、意思決定に必要なデータ分析が機能しません。市場の変化に応じた新規事業の立ち上げや製品サービスの改善スピードが鈍り、データ活用を武器にする競合他社に対して競争優位性を失う原因となっています。
併せて読みたい:レガシーシステムのモダナイゼーションとは?重要性や成功のポイントを解説
企業のモダナイゼーション事例

実際にレガシーシステムからの脱却に成功し、ビジネスに変革をもたらした事例を業界ごとに紹介します。
併せて読みたい:モダナイゼーション手法一覧|種類や選び方、進め方を解説
日産自動車|SAPシステムをAWSへ移行し、月次処理時間を74%短縮
日産自動車は、グループの会計基盤であるSAP ERPをオンプレミス環境で長年運用してきましたが、機器の老朽化が進み障害リスクの高まりが課題でした。デジタル戦略のもとでインフラ刷新が急務となり、国内8つのSAPシステムをAWS環境へマイグレーションしました。
個別原価計算システムでは同社初となるSAP S/4HANAへのモダナイゼーションを実施し、DBの暗号化等で安全性を担保しつつ、月次処理時間を74%短縮するなどパフォーマンス向上と業務効率化を達成しました。
※参考:AWS導入事例:日産自動車
ミスミグループ本社|基幹システムをマイクロサービス化し、開発スピードを3倍へ
ミスミグループ本社は、30年近くメインフレーム上で基幹システムを運用していましたが、急速な事業成長に対しシステムが硬直化し開発効率が課題となっていました。そこで経営陣の主導のもとAWSへの移行を決断しました。
さらに「NEWTON」プロジェクトによりシステム全体の基幹業務を担う層をマイクロサービス化・疎結合化し、メインフレームを継続していた場合との比較で、半分以下に削減できたといいます。
農林中央金庫|JAバンクの大規模基幹システムをAWSへ移行
農林中央金庫は、全国のJAバンクを支える「JASTEM システム」は2002年に構築され、その後2018年に至るまで、繰り返し刷新を行っていました。その後、クラウドサービスが金融にも浸透し、経営環境の変化に伴うコスト削減の高まりや、ビジネスへの拡張性・柔軟性の向上、他システムとの接続容易性などを考慮して、情報系のクラウド化を決定したようです。
その後、AWS環境へ移行し、データベースを商用DBから安価で高可用なAmazon Auroraへ刷新しました。AWSプロフェッショナルサービスを活用することで、セキュリティ実装やデータ移行を円滑に進められました。
※参考:AWS導入事例:農林中央金庫
南海電気鉄道|基幹業務系システムを全面クラウド化
南海電気鉄道は、運用していたプライベートクラウド基盤のサポート終了が迫り、ベンダー依存からの脱却と柔軟で拡張性の高いインフラ構築が課題となっていました。そこで同社はAWSの支援のもと社内人材の育成に注力し、基幹業務系システムの全面クラウド化を完全内製で移行実施しました。
AWSの支援を受けながら人材育成を進め、グループのIT・DXを担う南海システムソリューションズが、開発から運用まで100%の内製化を実現しました。環境ごとのAWSアカウント分離やAWS Network Firewallによる通信制御でセキュリティを強化し、6年間で25%のコスト削減と30%の生産性向上を見込んでいます。
※参考:AWS導入事例:南海電気鉄道
事例から学ぶ成功の共通点
モダナイゼーションを成し遂げた先行企業の事例から見えた、共通の成功要因をまとめました。
目的に応じて「移行」と「刷新」の範囲を決めている
事例を見ると、全てのシステムを同じ方法で刷新しているわけではありません。日産自動車では複数のSAPシステムをAWSへ移行しつつ、一部ではSAP S/4HANAへのモダナイゼーションも実施しています。自社の課題やシステム特性に応じて、移行だけで済ませる領域と、構造まで見直す領域を切り分けることが重要です。
システム刷新をコスト削減だけで終わらせていない
ミスミグループ本社では、AWSへの移行に加えてマイクロサービス化を進めることで、開発スピードの向上につなげています。モダナイゼーションでは、保守費削減だけでなく、新機能を素早く提供できるかなど、事業成長につながる成果まで目標に含めることが重要です。
システムだけでなく運用・組織も変えている
南海電気鉄道の事例では、クラウド移行と並行して社内人材のスキル強化を進め、内製で運用できる体制を構築しています。モダナイゼーション後も継続的に改善できるよう、開発・運用体制まで含めて設計することがポイントです。
モダナイゼーションを進める際に避けたいポイント
プロジェクトの挫折を防ぐために、事前に把握しておくべき失敗例と対策を解説します。
目的が曖昧なまま着手する
最新のクラウドに移行すること自体が目的となり、ビジネスをどう成長させるかという視点が欠けているケースです。多額の投資をしたにもかかわらず業務効率も収益も改善しない失敗に陥りがちです。対策として、プロジェクト開始前にゴールを言語化し、関係者全員でぶれない目的意識を共有することが欠かせません。
現行の全機能を再現しようとする
既存の仕様や業務フローをそのまま新システムへ移そうとする失敗パターンです。不要な機能や、過去の非効率な業務プロセスまで再現しようとするため、開発スコープが不必要に肥大化し、納期遅延や予算オーバーを引き起こします。業務そのものを最新のシステム標準に合わせて見直し、古い習慣に基づいた不要な機能は果敢に捨てる決断が求められます。
システム部に丸投げして孤立する
経営層や既存事業の責任者、PdMがプロジェクトをシステム部や外部ベンダーに丸投げしてしまうパターンです。現場の業務実態や事業戦略がシステム設計に反映されず、使い物にならないシステムが完成してしまいます。事業部門のキーマンをプロジェクトの初期から巻き込み、ビジネス視点での要件定義やフィードバックを繰り返す体制構築が必要です。
移行後の運用体制を想定していない
システムを構築してリリースすることに注力し、運用・保守体制の検討が疎かになるケースです。移行後に自社でトラブル対応や継続的な改善ができないため、特定のベンダーに再び依存してしまいます。開発段階からリリース後の運用フローを設計し、内製化を進めるために継続的な教育体制の整備を並行して進めなければなりません。
システム刷新を成功させる手順

企業が安全にモダナイゼーションを成功させるための手順を紹介します。
併せて読みたい:基幹システム刷新の進め方|老朽化のリスクに備えDX推進を実現する手順も解説
現状の可視化と目的を定義する
まずは、自社が保有するIT資産の現状を可視化し、システム刷新の目的を明確に定義します。現行システムのソースコード分析や業務フローのヒアリングを行い、レガシーの課題が潜んでいる場所の特定が必須です。経営戦略や新規事業開発のロードマップと照らし合わせ、システム刷新によってどのような効果をもたらすかを数値目標に落とし込みます。
自社に合ったを見極める
次に、可視化したシステム資産に対して、最適なモダナイゼーション手法を選定します。リファクタリング(再構築)、リホスト(インフラ移行)、リプラットフォーム(基盤変更)など、各手法の効果についての理解は欠かせません。システムの重要度や業務特性に応じて最適な手法を組み合わせて、投資対効果を最大化する移行計画を組み立てます。
社内体制の構築とベンダーを選定する
最後のステップは、社内体制の確立とベンダー選びです。システム部だけでなく、事業責任者やPdM、外部ベンダーがチームとなる体制を構築します。ベンダー選定においては、上流のコンサルティングから設計、開発までを一気通貫でサポートでき、自社のビジネスに深く寄り添ってくれるパートナー選びが、プロジェクトを成功に導く上で欠かせません。
まとめ
モダナイゼーションは単なるインフラの置き換えではなく、経営リスクを解消し企業のDXを推進するための重要な経営戦略です。本記事の成功事例や失敗パターンが示す通り、モダナイゼーションを成し遂げるには、綿密な資産の棚卸しや段階的な計画策定、そして経営層から事業現場までが一心同体となって取り組める体制づくりが欠かせません。
株式会社Sun Asteriskでは、DXコンサルティングや設計から、本格的なシステム開発までを一気通貫でサポートできるケイパビリティを備えています。実際の支援実績や導入効果、具体的な進め方をまとめた資料「AWS活用事例と導入メリット」をご用意していますので、ぜひご活用ください。
よくある質問
Q モダナイゼーションとマイグレーションの違いは何ですか?
Q システム刷新を検討する際、まず何から手をつけるべきですか?
Q モダナイゼーションはどのような手順で進めるのが一般的ですか?
Q モダナイゼーションプロジェクトにおいて避けたい失敗パターンや注意点は何ですか?
Q モダナイゼーションの実施にはどのくらいの費用や期間がかかりますか?
Q モダナイゼーションを進めるための体制構築や外部パートナーとの連携は可能ですか?

私たちSun Asteriskのソリューション・チーム・費用感・実績などをまとめました。

Sun Asteriskがこれまで手がけてきたプロジェクトを多数ご紹介しております。